街中に溢れる文字を求めて。まずは家にあった日本酒のラベルを眺めてみました。
『町まちの文字 完全版』という本を読みました。
町に溢れる「文字」を集めて著者の「画家」視点による独特の切り口で語られています。
看板の文字に始まり道標の文字まで至るところの文字を収集しています。
著者が言うには書道史上の人物から漏れた「人々」の文字を集めているとか。
それでも人々が書く字にはどうしても時代性が反映されるのが読んでいくと見えてきます。
昨今「デザイン書道家」という書家の字をよく見るようになりましたが、その言葉ができる遥か前から「文字」を魅せるものとして書く(あるいは描く)人々が居たことがわかります。
「町まちの文字」篇ではそういった人たちの商用的な活用をされたカラフル的な文字が踊り、「祈りの文字」篇では神社などに奉納されたどちらかというとモノクロ的な文字が鎮座しています。
全てモノクロ写真で表現されているにも関わらず、色がついてみえるのは著者の切り取った文字が生き生きしているからだろうなと思います。
こうした文字の語り方は文字や歴史に対する深い造詣が無いと難しいなと思います。
書道関係の本をたくさん読んできたつもりでしたが、こういうアート的な本は初めて読んだ気がします。そう考えると書道関係の本は全体的に教育的になっている気がしますが、どうなんでしょうか?それとも私の読んできた本がそういう傾向だっただけでしょうか?
そんな造詣・教養が足りない私ではありますが、この本に刺激され、もうちょっと収集の範囲を広げてみようと思いました。
なにせ、いいなと思う字は日常に溢れているんですよ。それに改めて気づかせてくれました。
ということで、まずは家にあったお酒のラベルから。
「ゆめほなみ」という日本酒です。
※お酒について詳しくは浜千鳥さんのHPをご覧下さい。
「銘柄・ラベルデザインは大槌町の青年団体「波工房」の皆様との共同企画です。」とHPに記載されています。ここに書者名が記載されていませんが、墨をたっぷりつけて澱みなく速い筆速で書かれた字が、このお酒の「さらりとした口当たり」を表現しているようです。
「ほ」字が右に傾いていることで、全体に軽やかさが増しているのも影響してそうです。
このお酒は個人的には冷で呑むのが好きです。
字が好きな仲間と飲む時に「字のいいお酒は美味しい」という話題が上がります。
「いい」字は主観によるものですので、人の好みにも似てくるかもしれません。
そんなことを思いながら収集をはじめていきたいと思います。